トップリンホフフォッグクラブクリック商品情報東京HPC
フォトオフィス・クリックはあなたの写真創作活動をサポートします

この「クリックからの提案」は過去に発行されたクラブクリックニュース(年間4回発行/A4版4頁から6頁構成)の中に掲載された「シリーズ・クリックからの提案」の記事を抜粋したものです。掲載内容は会員の皆様が常日頃に疑問に思われていることやもっと深く知りたいこと等をクリック独自の観点からご提案させていただくものです。 


タイトルの付け方

Photo: M. Horiguchi



 
 

[T] Vol.より抜粋 (発行: Jun. 2002
 
撮影した作品のタイトル(画題)付けに悩まされていませんか。特にフォトコンテストへのご応募の際には結構頭の痛いものです。先ず初回の「クリックからの提案」はそのタイトルの付け方について考えたいと思います。ちょっとした発想の転換で、その作品を生かすのも、殺すのもタイトル次第というのは過言ではありません。観る側(選者を含む)はその作品がどのような状況下で、何を感じ、何を撮ったかというのは「作品自体」だけでしか判断できないわけです。写真は、写真そのものの内容(絵柄)が何より重要なウエイトを占めていることは誰でもお解かりのことと存じますが、しかし、その写真が持つ印象を増幅させ、観る側にとってその作品に付けたタイトルがよりグレードの高いものに印象付けられることもありえるのです。現にあるフォトコンテストの審査で同じレベルの作品が最後の決戦になった場合、タイトルから判断されるというのをよく聞きます。また、撮影に出掛ける前にタイトルを想定してそのような作品を撮る方や、逆に現像が仕上がってから作品を見てタイトルを付ける方がありますが、どちらかと言いますと前者は後者に比べ結構きつい作業になります。本当に苦労して撮ったのですから、安易にタイトルを付けずに良く考え、その作品に合ったタイトルをお選びください。私には文才がないからと言って適当(いい加減)に軽く考えず、慎重にあのシャッターを押す瞬間を思い出しながら、その作品を輝かせてください。 

 


[U] Vol.
より抜粋 (発行: Aug. 2002
 先ず、場所の説明ではいけません。今回の富士山撮影会でもよくお解かりでしょうが、誰が見ても「富士山は富士山」で、浅間山ではありません。それを「何とかの富士」敢えて繰り返す必要もないのです。次に状況の説明ではいけないということです。観る側にとってその作品がいかにグレードの高い、深みのある作品であっても、その印象はそれだけになって、薄っぺらなものにしてしまっているのです。逆に観る側が考えさせれそうなタイトルだったら、審査する先生方が受ける印象は違ってきますし、更に上を狙えるかもしれないのです。次に「習作」や「何とかにて」などは以ての外のタイトルでして作者の感情のカケラも入っていなければ観る側にとっても、この人は何に感動してシャッターを押したのかなと、首を傾げたくなるのです。タイトルにばかり気をとられ本題の撮影がおろそかになってはいけませんが、いかにタイトルは重要

かがお解かりいただけたでしょうか。日本語のタイトルは日本人であれば理解(外国人の場合は上手い翻訳が必要になってきましので!)しあえるような気がします。

[V] Vol.
より抜粋 (発行: Nov. 2002
 今回は「情感あふれるタイトル」について考えたいと思います。それは自分の感情を素直に文字として表現できるかに掛かるかは誰にも解かります。その文字によって作品に動きを与え、甦ってくるようになれば、そのタイトルは素晴らしくマッチしていると言う事になる訳ですが、しかしそれはそれほど簡単な作業ではなさそうですので、そこで次のようなご提案を致します。先ず、被写体の動きや状態を観察すると、そこには小さな命や自然の息遣いが観えて(聞こえる)くるでしょう。それが自分にとって感動的なものであればシャッターを切る前に仕上がりを想定したタイトルをその時点で付けるのが最も理想とする形です。しかしいくら観察しても何も観えなし、聞こえてもこないという方は「本当にその被写体に感動したわけでない」ということになるといっても過言ではなさそうです。よく素晴らしい風景に「撮らされている」ということを聞きますが、正にそれはただ漠然としてシャッターを切ったものを言うのではないかと思います。それではクリックとして実際にタイトルに向いていると思われるものをご提案します。例えば富士山を撮っていて雲が面白いとすると「何々雲」とか「何々富士」とかになってしまいますが、そこは見方を替えて「天女の舞」とか「天空の誘惑」などの抽象的な表現はいかがでしょうか。もちろん多少大げさに見えると思いますが、観る側からするとその作家の美意識がにじみ出て味わい深く、より鮮明に解かり易くなってくると考えられます。
  





■ルール・エチケット・マナー

Photo: N. Kohno


 
 

[T] Vol.より抜粋 (発行: Feb. 2003
 今回から3回に分けて「ルール・エチケット・マナー」について考えてみようと思います。先ず、今回は撮影におけるカメラマンのルールとは何かについてです。古代から存在していただろう「ルール=規則」とは本来必要なものでしょうか。良識ある人間同士がお互いを尊重し合いながら生活していけば、そこにはルールなど存在しない筈です。それは理想郷のパラダイスですが・・・。しかしルールを決めなければ大混乱がおきます。現に大昔から繰り返されている戦争が現在もいつ勃発してもおかしくない世相の昨今が現実なのです。さて、本題のカメラマンのルールとは何でしょう。それは先ず「思いやり」から始まるとクリックは考えます。クリック会員の皆様は、戦争の最前線で生の情報を記録しようという方は少ないと思います。大半の方が美しい景色に感動を覚え後世に残そう、また他の方に伝えようとしている方々です。その美しいものは万人の共有物。しかし、その共有物を「自分だけのものに」と考えている方があるようです。あるところに一輪の花が咲き、背景との絶妙なバランスの素晴らしい光景があったとします。自分だけのものという考えの持ち主は撮影終了後、その花を折ってしまうということを聞いております。また、雪景色に撮影終了後、足跡を付けて帰るという方も・・・。本当に考えられません。このような方は写真を撮る資格がないように思えます。もちろんこういう方はクリックの会員様には存在しませんので、ご安心ください。クリックの会員様は左頁の倉田氏のように「すぐさま機材を再装着し写友たちにも声をかける」といった思いやりの持つ主ばかりの集団なのです。思いやり(譲り合い)があればルールなど存在しなくとも楽しく、素晴らしい写真の世界が体験できるのです。

 


[U] Vol.より抜粋 (発行: Apr. 2003
 今回は撮影におけるカメラマンのエチケットについて考えたいと思います。国語辞典に「エチケット:その時その場面において、そうすべきだとされる社交上の決まり」とあります。その社交上とは皆さんにとっては正に撮影現場であります。決してプロカメラマンが使うスタジオの一室ではありません。ということは我々カメラマン相互の関係のみならず一般の方々も関係してくると思われます。もちろんカメラマン同士でも気まずい思いをされたご経験の方もおありでしょうが、今回は一般の方に対してのカメラマンのエチケットをクローズアップさせていただきます。ある美しい風景と対峙したカメラマンはファインダーを凝視し一瞬のチャンスを待ちわびます。が、そこに一般の歩行者がファインダーの中に入った

とします。その時のカメラマンはどのように対応しますでしょうか。前回も言ったように美しい風景は万人の共有物です。しかし、夢中になっているカメラマンはつい言ってはならないとこを発してしまうのです。その共有物が「ファインダーの中は自分だけのもの」と考えている方があるようです。我々カメラマンはよく観光地に被写体を探し求めます。一本の桜に一日十数万人の人が訪れる昨今の現象を考えると、誰も訪れることのなかったところに一枚の写真が観光客を呼んでしまったかもしれません。しかしこんな平和な世の中ですから「風景は我々カメラマンだけのものではない」ということを意識しながら、ともに楽しく素晴らしい写真の世界が体験できるよう協力しあおうではありませんか。

[V] Vol.より抜粋 (発行: Jun. 2003
 さて、今回は撮影におけるカメラマンのマナーについてです。東京山手線に、いや日本国中どの電車に乗っても同じと思いますが、決まったように「車内での携帯電話ご使用はご遠慮下さい。」というアナウンスが流れます。そして「マナーモードにして下さい。」「心臓ペースメーカーに・・・。」等々うんざりします。が、しかしです。その人は聞こえてないのではないでしょうか?そのアナウンスの下で涼しい顔して、しかもいい大人が大声で肩から力が抜けます。それは「皆しているじゃないの! 私一人が守っても・・・。」決まって答えが返ってきそうです。そこでそんな「通称:ジコチュウ」の多い昨今にある事実を踏まえて、我々写真愛好家の方々に目を向けてみると、知らず知らずのうちに「そのジコチュウ」になっているようです。素晴らしい被写体に対峙して夢中でシャッターを押し続ける醍醐味は、写真を愛するもののみが知る自分だけの陶酔に浸る瞬間ですが、このような状態にあるときは得てして自分を見失うのです。我クラブのメンバーの方には殆ど見ることが出来ないのですが、例えば無意識のうちにフィルム空き箱や開封シールなどを落としたり、平気で立入禁止のロープを越えたりしまうこともあります。ある小学生が書いた中身の入った清涼飲料水を電車の中に捨ててあるポスターのキャッチコピーが「家の中でも捨てるのですか?」とありました。皆が最低のマナーを守ることにより、写真という楽しい趣味の世界を謳歌することが出来るのです。





■写真の魅せ方

Photo: H. Nogami


 
 

[T] Vol.より抜粋 (発行: Aug. 2003
 今回から3回に分け「写真の魅せ方」について様々な角度から分析していきたいと思っております。写真の魅せ方とは、先ずテーマに沿ったフォトコンテストなどに応募(単写真部)するような一枚の写真としての作品と、個展や自費出版写真集などの組写真によるもの、それに各種標本や絵葉書などが加わって、大きく3つに分類されると思います。今回は、その一枚の作品の魅せ方について考えます。あるフォトコンテスト審査中の会話に、「あの場所の作品だ」、「何処かで見たような作品だ」、「あの場所だったらこのアングルは違うよ」、また「うーん、この技法は古いよ」などと言われているのをご存知ですか。審査員の先生方も沢山の作品をご覧になっているわけですから、有名な場所や過去に流行った撮影テクニックなどでは選者の眼には留まらないのです。ましてやそれが撮影会後に実施されるフォトコンテストの応募作品なら尚更です。では、どのような作品が選者の眼に留まるのでしょうか。答えは場所も含めた新鮮なものとクリックは考えます。では、どのようにしてその新鮮なものを創れるのでしょうか。それは過去の名作と呼ばれる写真集や写真展などをご覧いただき眼を肥やすのも一つの方法です。もしその作品から何等かのものを得たとしたらしめたもの、全くの真似はいけませんが、少しお借りしてご自分の中で新しい技法として進化させてしまうのです。完全に新鮮なものを創りだすのは簡単な作業ではありません。如何に沢山の作品をご覧になるかに掛かってくるのです。そして撮影会などでは同じ被写体を同じような焦点距離のレンズで狙ってしまいますが、そこは入選確立が低いから別のアングルをというように「ご自分の作品」が自然に考えられるようになれば魅せ方が見えてくるとクリックはご提案いたします。

 


[U] Vol.より抜粋 (発行: Nov. 2003
 今回は「組写真」について考えたいと思います。ここでの組写真とは、一枚一枚の作品が集まる個展や写真集などに集約して考えるものです。あるテーマのもとに開催される個展には、会場の壁面構造や照明設備などそれなりの条件が加わってまいりますが、如何に来場者を感動させるかは「見せる順番」です。沢山の素晴らしい作品が並んでいても、その順番が間違っていたらテーマから離れたインパクトの弱い写真展になってしまいます。写真集も同様。永年撮り続けてきた集大成とも言える写真集をとお考えの方も少なくはないと思いますが、やはりここでも「見せる順

番」です。一般的な写真集は二点の作品による見開きになりますので、その反対側(対向)の作品が非常に重要になってくるのです。一点でも充分に迫力がある作品の対向が、また同じようではお互いの作品を殺してしまいます。主役と脇役との関係から考えますと、その迫力ある作品をより以上迫力が出させる引き立て役としての作品も必ず必要になってくるのです。国語辞典の「起・承・転・結」を引くと、「漢詩、ことに絶句の作法。第一句(起句)でいい始めた事柄を、第二句(承句)で展開し、第三句(転句)で転換した末に、第四句(結句)でまとめる構成法。」とあります。もちろん写真も同様です。作品の見せる順番によりストーリー性を持たせることで、見る側がそれに自然に入る事が出来、作者の一番魅せたい作品に感動すれば記憶に残る素晴らしいものになっているとクリックは考えます。しかし写真における起承転結の絵柄の区別が問題になりますが、それらについては次回に改めてご提案申し上げたいと思います。

[V] Vol.より抜粋 (発行: Dec. 2003
 今回は「絵柄の区別(選別)」について考えたいと思います。ここでの区別とは個展や写真集のときに行わなければならない作品を起承転結に準じた選び方を考えるものです。例えばある人が「我が心の故郷(ふるさと)」というテーマのもとに個展を開催すると仮定します。実際に作品は作者の生まれ育った幼少期の記憶を辿ったストーリーを起承転結に並べて見るとどのような絵柄になってくるのでしょうか。先ず「起」ですが、そこには川があり橋が架かっていて、そこに列車(SLであれば最高)が差し掛かる朝方の光景で、標準レンズか中望遠レンズで撮りました。次に「承」は樹齢百年を越える銀杏の木と、背景には木造校舎を配しました。校庭は銀杏の葉で黄色に染まっています。ここは広角レンズで撮りました。子供の頃からも大きく感じていた銀杏に木を更に大きく強調したいので、出来るだけ銀杏の木に寄って画面いっぱいに配し、背景の校舎はピントを外しました。それから「転」は町の中に架かる橋の欄干のアップです。彫刻が施されている木造の欄干はつい最近に取り替えられているものの昔の面影が漂っていたので撮ってみました。マクロレンズを使い背景には柳の枝を配しました。最後の「結」には神社の境内を持ってきました。紅葉の葉が落ち始めた秋の風景をあの頃の遊んだ情景のように出来るだけアングルを下げて広角レンズで撮りました。これは4枚の作品を想定した一例ですが、個展や写真集の場合はもっとたくさんの作品になりますので、これらもこの流れに沿って作品を並べる(見せる)ことにより作者の魅せたいものが見えてくるとクリックは考えます。





■被写体の見付け方

Photo: B. Yamada


 
 

[T] Vol.10より抜粋 (発行: Feb. 2004
 今回から3回に分けて「被写体の見付け方」について様々な角度から分析していきたいと思っております。撮影会でよくある話しですが、「ここで何を撮るのですか?」とか「ここは何ミリがいいですか?」などとベテランの方が初歩的なご質問されているのを聞いたことがあります。何故でしょうか。本人にすれば「撮影場所まで重い機材を持って行きたくない」、「被写体を探している時間がもったいない」などという理由かもしれませんが、何れにせよ「省エネ」していい作品を撮ろうと言うことではないかと推測されます。また、ただ漠然と皆が向いている方向にレンズを構える方や、一箇所に固定して位置をかえない方など果たしてそれで良いのでしょうか。そう言う方々にはひとつの共通点があります。それは「ご自分の撮りたいものが解らない」ということです。要するに風景などと対峙して「あそこをこう撮りたい」、「ここをこのように撮りたい」というように、ご自分の意思がはっきりとしていないのが挙げられます。所詮、写真は切り取る作業ですから「綺麗だな」とか「感動した」という部分をご自分なりのアングルで捉えればいいのですが、なかなかそうは上手くいかないものです。そこで提案。先ず冷静になって本当に撮りたいものを絞り込む。他の人の撮っているところ(アングル)は極力避ける。そしてその場所の見る角度を換えてみるという方法によりご自分だけの被写体は必ず見つかる。とクリックは考えます。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、1泊2日程度の撮影会で傑作が撮れるのはせいぜい2〜3枚と思った方が良いかもしれません。それがどの場所でも力んでしまうから肝心なところでミスしてしまうのです。これだと思ったところで冷静な対処が出来ていれば傑作は必ず増えるでしょう。

 


[U] Vol.11より抜粋 (発行: Apr. 2004
 今回は前回のご提案の具体的な例を挙げさせていただきます。先ず「冷静に被写体を絞り込む」ですが、大事なのはあくまでも冷静の中にそのものに対して本当に撮りたいか(少なくとも何らかの感動がある)であります。また色の変化や明暗といった光のアクセントを上手く利用することも忘れないでください。このことは非常に重要です。ただ押せば撮れる全自動のカメラが氾濫している現在では「カメラに撮らされている」という現象があり、それは作者の意思が入ってない写真が出来上がってしまうということなのです。そしてそれにはカメラの持つ長所や短所を十分に熟知するということも加味されてきます。次に「他の人とはアングルを避ける」ですが、例えばグループで日の出の撮影をしている時、殆どの人は

レンズを太陽に向けます。もちろん厳密に言うと何十人いても同じ作品は皆無ですが、同じような個性のない作品が仕上がるのは言うまでもありません。そこで提案です。反対側を見てください。そこには朝日が当たった感動の被写体が眠っているかもしれません。是非、お試しください。また「その場所の見る角度を変えてみる」も同様です。普段のアングルから脱皮して様々な角度から見ることにより新しい発見が生まれるということです。ネーチャーフォトにチャレンジされている会員の皆様は、殆どの方々がアマチュアですので、「被写体とは人から与えられるものではなく、自分で見付けるものです。」ということを肝に銘じて傑作創りに励んでください。ご健闘を祈ります。

[V] Vol.12より抜粋 (発行: Jun. 2004
 さて、このテーマの最後は「固定観念を捨てる」です。季節の移り変わりに微妙な変化が見られる昨今、地球温暖化の影響なのか定かではありませんが、桜の開花や新緑、紅葉に至るまでもが例年より早くなっているということを良く聞きます。写真愛好家の皆様はその微妙な変化を察知してより良い被写体を求めてきました。これは今後も変わることのないと思います。そこで提案です。毎年繰り返してきた固定観念や今までの慣習を取り敢えず忘れて見てはいかがですか。ここでの固定観念とは「こうでなくてはいけない!」、「こうあるべき!」などと頭から決め付けるということです。ある撮影地で想定外の天候に遭ったり、或いはピークが既に外れていたりした場合などは「直ぐに諦めてしまう」といった方が見受けられます。もちろん諦めずに与えられた範囲の中で果敢に挑戦し、実践されている方は既に大勢いらっしゃいますが、これはあくまでも一般論であって、一部の方が頑なに固定観念にこだわり続けているということです。今まで長年培った写真に対する考え方を簡単に変えることはそう簡単なことではありませんが、この固定観念をなくし新たな世界を見付けて更に写真を謳歌していただくことを強く望む次第です。ご期待申し上げます。





■ブレについて

Photo: M. Koga


 
 

[T] Vol.13より抜粋 (発行: Aug. 2004
 今回からは「写真のブレについて」考えます。このブレには「カメラによるブレ」と「被写体によるブレ」とに分けられ、今回は「カメラブレ」にテーマを絞ります。誰でも経験されていると思いますが、カメラブレとは言う迄もなく「シャッターの瞬間にカメラ本体が動いて画像が流れる現象」で、しかしこれがアマチュア写真家にとっては奥が深くなかなか厄介な問題なのです。折角、適正露出で気に入った構図に仕上がった作品でも「ブレている」といった話をよく聞きます。ではどうしてカメラブレをするのでしょうか。答えは殆どの原因が三脚にあると考えられます。固定すべきところが不安定ではブレしまうのは当たり前で、使用する機材に合わせ出来るだけ重量のあるものを選びたいのですが、でもそれには限度がありますので、移動には容易なカーボンなどの軽量のものを選び、撮影の際はストーンバック等で対処したい。もう一つの原因として挙げられるのは「テレコン」による微妙なブレです。簡単に焦点距離を上げることができるため、安易に用いがちですが、より以上に三脚に気を配ってください。またもう一つの要素は「風」。ネーチャーフォトが主な皆様にとりまして風対策は以外に無関心な方が多く、強風は別にしても「微風」でもカメラは揺れています。それに蛇腹フードや雨よけ傘などの風の影響を受け易いものを避けることも重要なポイントです。なお、ご自分の作品がブレているのに気が付かない方が多いようです。6〜8倍ルーペでしっかり見ることも大切な要素です。

 


[U] Vol.14より抜粋 (発行: Oct. 2004
 今回はもう一つのブレである「被写体によるブレ」をテーマに絞ります。人間の眼は素晴しい順応性があります。しかし時として困った状況下に置かれる場合もあり、特に写真においては真実が写し込まれますので、それは人間の眼で見た通りに移らないということになりますから厄介なのです。現在我々の手にする通常のフィルム(ISO50〜100)を使用する限りスローシャッターを強いられるケースが多々あり、そのスローシャッターこそブレの原因なのは誰でも解かる事実です。では逆に感度を上げてハイスピードシャッターを切れば良いということになりますが、ご存知の通り、増感現像や高感度フィルムは粒状性の問題が発生しますので、止むを得ず使わなければならない時は別として避けたい。そこで提案です。それらの現在の現実(=常識)を踏まえて考えた場合、そのスローシャッター(=ブレ)と上手く付き合うということもひとつの手です。よく見る写真に星の流れや、薄暮時の岩礁に打ち

付ける波が霧のようになったものなど、現実には見えないものがスローシャッターにより再現されますが、正にこのことが写真の醍醐味ではないでしょうか。またこれもよく見る写真に滝や渓流の水の流れを撮ったがあります。8分の1がベスト、いやそれ以上スローがベストなどと論議が交わされているようですが、これまたスローシャッターの別世界が繰り広がりますから面白いのです。そのスローシャッターの世界を上手く操れるようになれば作品の巾も広がりますので、前述(13号)のように足元(=三脚)のポイントも含め、皆様にとりましての趣味の世界を大いに楽しんでいただくことが出来ましたら非常に嬉しいです。





■スクエアフォーマットについて

Photo: T. Kinpara


 
 

[T] Vol.15より抜粋 (発行:Dec. 2004
 今回からは新たなテーマとして「スクエアフォーマット」について考えて行きたいと思います。さて「正方形」という形は古いのでしょうか。それとも新しいのでしょうか。その答えは出ませんが、新しくないことは事実です。現に古代エジプトのピラミッド底辺部は正方形で、いつの時代から出来たか解りませんが、枡やサイコロもそうです。それは単純にデザイン上の問題でなく、正方形でなければならない理由も存在します。この世の中にはその他様々な正方形が存在します。では長方形はどうでしょう。正方形に比べて今や大半が長方形であることは間違いありません。中世ヨーロッパで提唱された黄金分割のようにこの世の中に自然に溶け込む形が長方形なのです。この形は当時の絵画や建築物を見ると一目瞭然で、それは現代も受け継がれて今後も絶えることはないでしょう。そしてそれは我々写真に携わる者にも大きく影響していることは言うまでもありません。35mm・セミ判・6x7cm・6x8cm・6x9cm・4x5in・5x7in・8x10inなど銀塩サイズの殆どが長方形です。その中にあって6x6cmが唯一の正方形になるわけですが、「正方形の構図は難しい」、「また正方形で撮ったが、印画紙が長方形なので不経済だからトリミングして印画紙のフルサイズでプリントした」などとよく聞きます。果たしてそれは正解でしょうか。そこでそういう方にご提案いたします。逆の発想をしてみることです。世の中は長方形だらけなのですから、正方形が新鮮に見えるのではないでしょうか。また正方形は魅せ方によって様々なイメージを宿らせることや、標準レンズでありながら広角や望遠レンズの効果を与えたりすることも可能な、融通の利く形なのです。そんな正方形を経験されていない方、躊躇されている方には、是非、スクエアフォーマットの世界へお越しください。後悔させません。

 


[U] Vol.16より抜粋 (発行: Mar. 2005
 前回の「スクエアフォーマット=正方形」は、「魅せ方によって様々なイメージを宿らせることが出来る」ということを提案致しました。今回は正方形での構図についてその魅力を探ってみたいと思います。「正方形の構図は難しい」という意見があることを前回の提案の中でも少し触れました。ではそれを理解できるようになるには何をすればいいのでしょうか。それは簡単な基礎知識を会得することです。その基礎知識がある程度理解できたら後は意外に簡単で、決して難しいものではないことに気が付く筈です。では具体的な基礎知識とは何でしょうか。一般的に写真教本の構図に

ついての項は、対角線構図や水平構図、三角構図、遠近構図、S字構図などで編集され、それに黄金分割の定義などと、その著者の考えが加味された内容で市販されています。ここで言う「基礎知識の得た方」とはこの教本に書かれている内容をある程度理解した方を指します。その構図の名称は画面の構成がその名の通りに付けられています。例えば、水平構図は水平線や地平線が画面を横切り、S字構図はローマ字の「S」に似たものが主に画面を占めていて簡単明瞭かと思います。そして基礎知識を得てからよく見る定番の写真を苦もなく撮られるようになって、いざ応用編に移った時に様々な雑念が入り解らなくなってしまう、所謂「壁」に突き当たる方が多いようです。ではその壁を破るには何をしなければならないかというと「それは基礎知識を踏まえて概念を払拭することです。」難しいようですが、従来の定石(=定番)から離れることが出来れば独自の写真の道が開きます。要は型にはまった写真ばかり撮っていても他人は理解してくれないと言うことです。既に壁を突き破り自由に撮り回っている方々共々、更に上を目指して楽しい写真を謳歌して頂きたいとクリックは提案します。

[V] Vol.17より抜粋 (発行: Jun. 2005
 前回の「スクエアフォーマット=正方形」は、「
定石(=定番)から離れることが出来れば独自の写真の道が開きます」ということをご提案致しました。今回は正方形での画面構成について考えてみたいと思います。正方形でなく矩形においても画面構成は非常に重要なポイントを占めます。それは「主役・脇役」といった演劇用語で表現されることもあります。作者は画面構成を考える上で何を主体(主役)に撮るのか、主体を引き立たせるために何(脇役)を配置するかを考え作品として仕上げていく訳ですが、しかし素晴らしい風景などの被写体と対峙したとき、それが瞬時に決められないまま、漠然とシャッターを切ってしまう。所謂その被写体に「撮らされてしまう」ということがあるようです。よく撮影会で「ここで何を撮るのでしょう?」や、ご指導の先生に「これでいいですか?」と言いながらファインダーを覗いて貰うということがあります。先ず、何を撮るかはその被写体を見てから作者が決めるのであって、「この場所ではこれを撮りなさい」といった主催者側の説明は本来あるべき姿ではなく、また先生のご指導を受ける場合は、「自分はこれに魅かれて撮りたいのですが」と具体的に主役をはっきりさせてから画面構成について導いてもらうことです。これらのことが曖昧だと指導する側からの答えが出し難くなります。若葉の奇麗な新緑を撮る時、咲き誇る花畑を撮る時、色付く紅葉を撮る時、それぞれに主役・脇役を配置させなければなりませんが、新緑や紅葉はいい枝振りを見付けて主役にして色の違ったものや建物などを脇役に、花畑では絞りを開き気味にして一輪の花を決めそれにピントを合わせるといった具合に、要はその時に作者の一番撮りたいものを決めることが先決で、それは自分の意思で決めなければならないのです。





■作品整理について

Photo: Y. Yamamoto


 
 

[T] Vol.18より抜粋 (発行: Sep. 2005
 今回からは新たなテーマとして「作品整理について」考えてみたいと思います。「作品の整理は苦手だ!」と多くの方から聞きます。折角、時間とお金を掛けて撮ってきた貴重な作品を現像上りのホルダーのままロッカーや押入れに放置され、終いにはカビを生えさせてしまう悲しい末路の現実に見覚えありませんか。また現像上りをチェックしたもののそのまま手付かず数ヶ月から数年が経ち、だんだん記憶からなくなる末路もあります。さて、それはどうしてそうなるのでしょうか。失礼な言い方ですが、それは自分の作品を見極めることに自信がもてないこと、そして撮影時の感動を引き摺ったまま現像上がりを見てイメージ通りに写せなかったことに対し落胆してしまうということなどが挙げられます。要するに「自分の作品は見え難い」ということです。ではどうしたら見えて来るのでしょうか。それには消去法をお薦めします。先ず、極端な
露出のオーバーとアンダーを除いていきます。それから意図した被写体のブレは別にしてもブレている作品は避けるべきです。次にピントです。このピントは結構難しい判断が要求されますが、高性能のルーペで時間を掛けてじっくり見てください。最後に画面の隅などに余計なものが写ってないかなど細部にわたって見極める必要がありますが、構図などを含めて自分の意図した作品に仕上がったものであるかです。以上のような手段を経て、作品を絞っていきますと、自ずといい作品が見えてくるでしょう。なお、迷った際の他人の意見も結構重要になってきます。

 


[U] Vol.19より抜粋 (発行: Dec. 2005
 作品の整理について非常に大事になってくるのは、先ずご自分の作品の最終目的が何であるかを決めていただく必要があるということです。それは種類別・季節別或いは場所別など様々な分別の仕方がありますが、その目的に合わせた分け方をしなければなりません。その目的によって大きく違ってきますので、その方向性を必ず決めてください。そして最終目的が決定したら、前述した手法によりある程度に絞り込んだ作品に「名前を付ける」ということです。もちろんそれは整理番号という名前ですが、これが後々に大切になってくるのです。それは例えば(MT[5]-長野白馬/25-2005//20/AM)と言ったのは如何でしょうか。最初のMTは「山」の略号で次の数は山の中での種類で、次は場所と同所での枚数、最後に年月日と大よそ時間帯を示します。その時に使用したカメラ・レンズや絞り・シャッタースピードなどの詳細は最終的

に必要とは思えません。そのデータを控える時間は撮影に専念していただき、万一、データを必要とした場合は現像後に思い出していただければ良いので、要は撮影の時間は雑念を払い撮影に没頭され、現像後の整理の段階で面倒がらずに個々の作品に名前を付けてあげてください。その作品が命を授かった子供のように見えてくるでしょう。それらの作業が苦手な方には苦痛でしょうが、それをやることが出来なければ、折角の傑作も日の目を見ずに埋もれてしまうことさえありますので、お金と時間を掛けて撮った作品は最後まで面倒を見てあげることをご提案申し上げます。

[V] Vol.20より抜粋 (発行: Feb. 2006
 前回の「作品整理についてU」は、「最終目的に応じて分類し作品に名前を付けましょう」などというご提案を申し上げました。このテーマ最後の今回は、ポイントを2つに絞ってご提案させていただきたいと思います。(今回はポジフィルムの場合のみ)先ず「よりコンパクトに!」ということをご提案します。何年、何十年と撮り続けた膨大な量になる作品は、最終的にガラス付きのプラスチックマウントが安全で整理し易いかとは存じますが、しかし果たしてそうでしょうか。プラスチックマウントはそれ自体に厚みがあり、数量によってはかなりのスペースを必要としますので、プロジェクターなどで投影しない限り出きるだけ避けたいところです。そこでご提案ですが、
サイズに合わせたPP袋(厚口ポリプロピレン袋)をご購入いただき、それに入れれば少なくとも10数分の1の厚みになり、大きさも若干小さく、そして最後は市販のクリアファイルに保存していただく方法が省スペースを考慮したベストの選択かと思いますので、是非お試しください。もう一つは「露光の違ったものも必要!」ということです。規定5500K(ケルビン)の性能を持つビュアーでご覧になり、適正ポジを保管するのはもちろんですが、段階露光で撮られたアンダー気味のものも保管しておきましょう。アンダーのものはオーバーのものより情報量が多く詰まっていますので、後処理する際に作業がし易くなるのです。なお作品をご覧になるときは間違っても天井の蛍光灯越しなどでご覧にならないでください。





■機材の保管について

Photo: Y. Kurata


 
 

[T] Vol.21 (発行:Jul.2006
 日本には四季があります。その四季は様々に彩られた風景をもたらし我々を魅了してくれます。しかし厄介なこともあります。それは湿気による「カビ」発生です。カビは皆様の大事なカメラ機材を蝕み、早期発見によるカビの除去は可能ですが、レンズの表面に施されているコーティングまで侵食されると、カビを除去してもその侵食跡は残ってしまいます。まだまだ科学的な研究が続く人体に良い影響を与えるカビもありますが、カメラ機材にとりましてのカビは絶対的に天敵なのです。カビはレンズの表面に如実に現れますが、他の部分にはサビという結果になって現れ、そのカメラ機材に取りましても取り返しのつかない致命傷となることは誰にでも解かる現象です。ではカビ発生の予防策としてどうしたら良いのでしょうか。それは先ず、風通しの良いところを選ぶことで、風通しの良い所には「ホコリ」がつきものですが、シリコンクロス等で包んで柱等に吊り下げておくのも方法です。風によりカビの胞子が定着しにくくし、カビの発生を防ぐのが、第一の方法なのです。逆な言い方をしますと、何かの容器に収納し密閉することがカメラ機材にとりましての最悪の状態なのです。もちろん市販されている「除湿機能付き保管庫」を用いるのも一つの方法ですが。

 


[U] Vol.23 (発行:Dec.2006
 一昔前の話ですが、ある方が欧州製の某アルミニュームカメラバックを購入され、そして早速真新しい高級カメラを収納しました。そこまでは何ら問題がありませんでした。しかしその後、多忙が続き10ヶ月近くカメラバックを開けることはありませんでした。結果はご想像の通りで、金属部からはメッキが剥がれ合成皮革部の表面には淡いカビが生えていました。これらのカビの原因は「接着剤」にあったようです。アルミニューム製カメラバックの内装には通常布などが施されていて、その布を固定するための接着剤(溶液)からガスが発生した影響と考えられます。現在はバックメーカーの様々な企業努力の結果、更に改良を重ね改善されたと聞いておりますが、それでも完全ではないと思います。要するに前述したように「密閉状態の回避」です。デジタルの出現により銀塩が押しやられた状況下にある現実を踏まえ、機材を如何に長持ちさせるかは「管理者の心得」に掛かっております。某カメラメーカーの銀塩部門の製造縮小や中止と言ったことの情報に、今後いつまで銀塩カメラと付き合えるかと言う自問自答しなければならない現実は寂しい限りですが、国産フィルムメーカーの新製品発表などの明るいニュースもありますので、お手持ちの機材だけでも万全な状態で保管しておきたいものです。欲しい時、市場に存在するとは限らなくなるからです。

[V] Vol.24 (発行:Feb.2007
 先ず「最低のルールを守る」ことです。それはメーカーによって異なってきますが、説明書に記載されている保管する際の諸注意を必ず実践することが非常に大事なのです。それは「バッテリーを外しておくこと」や、「フィルム巻き上げをチャージしておくこと(メーカーによって極端に異なる)」など、様々な項目が記されておりますが、その殆どが当たり前のことで、常識の範囲内のものが記されているため大半が無視される傾向にあるのです。では何故今回このようなテーマにしたかということは、説明書を読まないことが原因で発生したトラブルあるからです。正しい使い方をしていれば何ら問題も無く「気持ちよくカメラを楽しめる」のに、誤った使い方で不愉快なことに発展し、挙句の果てには費用も掛かってしまうダブルパンチを食うのです。ユーザーが説明書を読まなくなった原因は、メーカーがPL法(製造物責任法/1994年)の制定から神経質になり、そして分厚い説明書を添付するようになったことが更に拍車を掛けた原因とも考えられますが、それらの大半が所有者にとって無意味なことであっても、その機材の「約束事」は最低限理解しておくことが義務なのです。そして「カメラも生き物」であることを付け加えておきます。ペットと飼い主の間で芽生える「愛情」のように、カメラにも愛を持って接してやれば末永く「従順に」慕ってくるでしょう。





■写真集出版を考える

Photo: T. Ogura


 
 

[T] Vol.25 (発行:Jun.2007
 今回からは「写真集の出版」についてご提案申し上げます。さて貴方にとりましての写真とは何ですか。その位置付けは何処に置いていますでしょうか。それは家族の記念写真から始まった記録写真ですか、それとも単に自分だけの趣味に留めておく写真ですか。何れにせよ大金を叩いて手に入れたカメラや様々な場面を想定して取り揃えた交換レンズ、アクセサリーなど、また撮影の度に発生する現像代等々を考えてみてください。何もしないのは「もったいない」という考えになりませんか。このような視点からクリックでは「最終的な目標」を掲げることをご提案申し上げたいのです。その目標が日々の写真創作活動に刺激を与え自己満足世界から脱却して、「他人に見せる写真の創作活動」へと変貌するのです。では、その集大成へ向けた準備としてどのような段階を踏めばいいのでしょうか。先ずは目標(=写真集のタイトル)の明確化です。写真展も同様ですが、最終的な「タイトルや流れ」をどのようにするかを描いてみることです。それは絵コンテでもいいですが、繰り返しダミーを作りながら模索しつつその方向性を見出すことです。メインタイトルは見る側にとって最初に見る想像を掻き立てるもので、写真集を開く前から作者の文字での美意識が伝わってこなければなりません。そしてそのタイトルは作品を輝かせなければならないという使命もあるのですから非常に大事になってきます。

 


[U] Vol.26 (発行:Aug.2007
 今回は「写真集の出版を考える」というテーマの中で「流れ」についてご提案申し上げます。この流れについては本紙8号(2003年11月発行)と9号(2003年12月発行)において「写真の魅せ方」というテーマの中でもご提案申し上げた「写真における起承転結」を思い浮かべてください。この起承転結こそ「流れ」の基本なのです。今回は写真集の構成上、最もウエイトを置かなければいけないこの起承転結について掘り下げて行きたいと思います。メインタイトルは決定したと言うことを前提に構成を考えた場合、先ず「前書き」が必要になってきます。この部分を割愛して最初から作品を掲載する方法もありますが、より高いグレードの写真集を追求していくと必要になってきます。それは文字の援護を受けて作品に輝きが出てくるようになり、そして作品登場となる訳です。極端な例になりますが、仮に風景写真集を出版するときはどうしたらよいかを探ってみましょう。先ず前述のように起承転結に従って大人しい絵柄から入るのが定石でしょう。大人しい絵柄とは広い風景などを指し、次にくるのが風景の中から切り取られた場所

の凝縮した作品にします。そして次の作品が非常に大事になってきます。その「転句」の項には雰囲気の違ったものをおきます。例えば草花のクローズアップなども候補に挙がります。最後の「結句」はまとめです。この項にご自分が最も気に入っている作品を持ってくるというまとめ方をお勧めいたします。

[
V] Vol.27 (発行:Dec.2007
 今回も「写真集の出版を考える」というテーマの中で、具体的な関心事である「出版費用」についてご提案申し上げます。先ず、自費出版する際に最初に突き当たる難関は「印刷費用」です。それは最大の難関でもあります。写真集はそのボリュームや形態などによっても「ピンキリ」になります。従来はオフセット印刷技法が主流でありましたが、近年になってオンデマンド(DTP)印刷技法が頭角を現し、カメラ機材同様にデジタル化が進んでいてその勢いは増すばかりです。今回のご提案は、そのオンデマンドによる写真集を考えてみようと思います。経済最少ロットが500部や1000部とも言われるオフセットはサイズによっては異なりますが、ハードカバー仕様に至っては300万円から500万円と言った膨大な金額を費やす必要があり、趣味の世界ではなくなり、通常の手の届く範囲から離れてしまいます。そこでオンデマンドの登場になる訳です。オンデマンドはオフセットに比べ印刷工程を簡素化したばかりか、少ないロッドからでも対応できるのが最大の特徴です。まだまだ微妙な描写に問題が残るものの、総合的なに費用などを考えると十分に検討する価値はありそうです。現在クリックではこのオンデマンドによる写真集の企画が詰めの段階に入っており、近日中にご案内の運びとなります。因みにハードカバー/A4サイズ/20頁(作品20点)等で制作数50部(デザイン・データ作成を含む)が約30万円位になる予定です。





■寒冷地撮影の心構え

Photo: K. Takae
 

[T] Vol.28 (発行:Feb.2008
 今回は新たなテーマとして「寒冷地撮影の心構え」です。寒冷地では「結露」と「バッテリー電力低下」が最大の課題で、この障害をクリアすれば極寒に地でも楽しい撮影が可能です。結露はご存知のように急激な温度変化により空気中の水蒸気が凝結して水滴が付く現象ですが、これがボディ(スクリーン)やレンズ、ファインダーに付くと厄介なことになります。これを避けるには先ず、冷え切った撮影機材は暖かい室内に持ち込まないことが大原則となります。そして空気中の水蒸気を付かないようにしてやれば結露しないわけですからビニールやエアーキャップ等で包んでやり徐々に室内温度に慣らしてやることです。そしてある程度慣れたら大丈夫と言うことになる訳です。またバッテリーの電力低下は温度低下と比例しますので、バッテリーを暖めてやる必要があります。理想はコードにより繋がれた外部電力ですが、カメラ全体を厚手の布で覆ってやる方法もあります。




■撮影ツアーを考える

Photo: Y. Takada


 
 

[T] Vol.29 (発行:Apr.2008
 今回は新たなテーマとして「撮影ツアー」について考えてみたいと思います。先ずベースにあるのは、クラブクリックの撮影会ツアーは企画する上で最大のポイント「参加者が満足できる納得のツアー」を仕上げることです。それは商業ベースに伴った某旅行のツアーとは大分懸け離れたものになっていて、激安ツアーや短時間で沢山の地域を訪問するツアーとは全く別の次元の話です。たとえその旅行費が通常のものと比べて多少割高になってしまってもこのポリシーはかえるつもりはありません。現時点での会員様の平均年齢を考慮した場合、体力が必要な山岳地帯やアップダウンのある歩くコースを入れることを避けなければなりません。そう言った中で魅力的なツアーを組み立てるのは容易なことではありませんが、それがクリックに課せられた任務なのです。また「良い写真を撮っていただく」と言うことも忘れてはなりません。それにはその場所に精通した方の存在が必要で、加えて必ず下見をすると言うことです。次に考えるのは「ゆったり」すると言うことです。これは利用交通機関や宿泊施設先もそうですが、スケジュールも十分に考慮し会員の皆様のご意見や体調を観察しながら臨機応変に対応しております。そして中々いけない場所ですから多少の贅沢をも加味しているのが今実施させていただいているクラブクリックツアーの考えです。

 


[U] Vol.30 (発行:Aug.2008
 今回はご参加される皆様側から見た撮影ツアーを考えてみたいと思います。団体旅行は自由が利かず、個人的な希望を言い難いなどのご意見の方がいらっしゃいます。それらは一般パックツアー等に如実に表れます。最近は大手旅行社による撮影ツアーが企画されています。内容を吟味し検討を重ねる必要がありますが、それらのツアーを違う観点から見た場合、最大の利点が「黙って居ても撮影場所に連れていってくれる」と言う、非常に楽であることに気付く筈です。個人的に行き先を考える場合はそうは行きません。道中の労働も強いられますので、一概に「自由だ」とは言いがたい面があります。要は撮影地を研究し続けているプロに「お任せ!」するか、シーズンや場所を徹底的に調べて個人行動をとるかは会員の皆様ご自身がご判断されることなのです。それにはご自身の体力と気力に相談することが先決ですが・・・。




■賢い中古品の選び方

Photo: E. Sato


 
 

[T] Vol.31 (発行:Oct.2008
 今回からは「賢い中古品の選び方」を考えてみたいと思います。カメラの歴史は、1837年フランス人のダゲールによって発明された「ダゲレオタイプ」が最初とされ、それから170年以上経過し、近年になって変革期を向えています。それはデジタルカメラです。その勢いは凄まじいもので、銀塩カメラはいまやその追随を受けてついに逆転され消滅してしまう状況下にあります。そこで今回のテーマ「賢い中古品の選び方(まだ銀塩が存続できると確信して)」としてご提案させていただこうと思います。慣れ親しんだカメラメーカーの機種が消えていくのは、実に寂しい話です。メーカーも生き残りを考えた場合、デジタルへの転換は止むを得ないことかも知れませんが、我々の現実を見据えた場合、現状の市場で満たさなければならないことは明確な答えになってくると言うことを踏また上でご提案をお聞きください。今回はハッセルブラッドのボディに関して触れます。先ず製造年をチェックしましょう。ハッセルは製造年をアルファベットの「V・H・P・I・C・T・U・R・E・S」で刻印されています。これはV=1で、P=2と言った具合にS=0になり、つまり今年は「SR=08年」と言った具合に、ボディ後部のシリアル番号に刻印(年式により多少異なる)されています。

 


[U] Vol.32 (発行:Dec.2008
 ハッセルブラッドはご存知の通り、1000Fを起源とするフォーカルプレンシャッターカメラと、500Cを起源とするレンズシャッターカメラとに大きく分かれますが、今回はDr..ハッセルブラッド博士の考案によりデビューさせ、当時の世界を驚嘆させたフォーカルプレンシャッターカメラについて考えたいと思います。鳥類分野の権威である博士は研究のために一眼レフの高速シャッターを必要とするカメラが欲しかった。しかし世の中にはその様なカメラが存在しないことを知り、自分で作ってしまったのです。それが1000Fで、その後モデルチェンジを重ねながら最新の203FEに継承されましたが、そのモデルも現在は生産中止の末路。では何故こうなったのでしょうか。答えはこれらのカメラの共通点であるレンズシャッターより「非常にデリケート」な作りという事で、特に205TCC以降はその傾向にあるようです。そこでクリックからの提案としては、これらのカメラが中古市場に存在するのであればそのカメラの状況によりますが、「慎重に」という冠が付きます。万一の場合には高額な修理代を覚悟しなければならなくなり、数ヶ月と言う期間も覚悟しなければなりませんので、要は簡単に手を出さないほうが賢明と言うことです。

[V] Vol.33 (発行:May.2009
 今回の「賢い中古品の選び方」は500シリーズについて考えたいと思います。1957年(昭和32年)に発表された500Cは最速機能1/500秒と言うレンズシャッターモデルで登場しました。このモデルはストロボに全速同調することから、当時のプロカメラマンに絶大の支持を得て、その評判はアマチュアへと広がり現代に至るわけです。それは50年以上前に製造されたカメラに今のレンズなどが装着できるのであるから如何に基本コンセプトがしっかりしたものであったかということが言えるでしょう。今回はその500シリーズについてご提案を申し上げます。現在製造ラインに乗っているのはこの500シリーズのみですが、この機種も何時かはストップするのは間違いなく、それはそれ程遠くないかも知れません。今後ハッセルブラッドを続けようとされる方は将来を見据えた中古市場での購入計画をお立てになっては如何でしょうか。それは自己防衛的なことになってしまいますが、現実に沿った賢い選択であることは事実です。なお中古品での最大の問題はメンテナンスを考えておかなければなりませんが、クリックでは会員の皆様がお困りの際には全てにおいて対応させていただくつもりです。ご安心ください。

[W] Vol.34 (発行:Jul.2009
 今回の「賢い中古品の選び方」も更に掘り下げた500シリーズを考えたいと思います。現在製造されているには503CWですが、やはりこの機種が望遠レンズ使用時に起きるミラー切れ現象の機能から考えると一番優れていると考えられます。従って中古市場では503CWが503CXiや503CXより高値で取引されているのは事実です。では果たしてCWだけを中古の対象として考えるべきなのでしょうか。答えは「NO」で、それは機能的に優れていても耐久性やその時代に使われた素材等を考慮した場合、決してCXiやCXを無視できないと言うことです。ましてやCXiやCXに慣れ親しんでいる方にはもう一台の「CXiやCXを」考えてはいかがでしょう。これも将来を見据えた自己防衛になりますが、中古市場が落ち込んでいる時期だけに「今が買い」なのです。この商品の今後を考えた場合、商材的観点からも市場の数が増えることは考えにくく、むしろ減少の一途を辿るのではないでしょうか。もちろんお求めになる前のチェックポイントとして、繰り返しになりますがメンテナンス体制が整っていることが大前提になってきます。

[X] Vol.35 (発行:Dec.2009
 今回の「賢い中古品の選び方」はハッセルブラッドで最もポピュラーなレンズ(レンズシャッター)についてご提案します。フォーカルプレンカメラでデビューしたハッセルブラッドは、後にカールツァイス社製のレンズを採用することで一躍脚光を浴びることになるのですが、その時のレンズこそ「ストロボ日中シンクロ可能なシャッター内臓のCモデル」で、それからCFやCFi、CFEモデルとその対応形態を変えてモデルチェンジを重ねてまいりました。そして現在の中古市場はCFモデルが主流のようです。そこで問題ですが、果たしてCモデルは過去のものにしてもいいのでしょうか。これも前回同様「NO」です。もちろんメンテナンスのことを考えると多額に投資は避けたいところですが、幸いに市場は安値で売買されていて、万一、故障したときの部品の問題が残るものの、現時点では何ら問題なく解決(修理可能)していますので心配なさそうです。見ているだけでも実に楽しいCモデルの今後は市場から姿を消す運命であることは明らかですから、今が「憧れだったあの時のレンズ」を入手する絶好のタイミングかも知れません。


[Y] Vol.36 (発行:Mar.2010
 今回の「賢い中古品の選び方」はハッセルブラッドの全盛期の一角を担った高額なフォーカルプレンシャッターレンズについてご提案申し上げます。フォーカルプレンシャッター用レンズとレンズシャッター用レンズとの大きな違いは、フォーカルプレンの方が設計上シャッターを内蔵する必要がない為、明るいレンズが可能になり中判レンズにしては珍しいF2.0のプラナー110mmを始めとする大口径レンズ郡は、レンズシャッターに比べて1絞り〜2絞り位の明るさが実現できたのです。それはボディに内蔵されて1/2000秒の高速シャッターと相まってスナップ撮影などに期待されました。そして現在のフォーカルプレンシャッター用レンズと言うとレンズ自体にシャッターが付いていない為に「CFE(シャッター内臓のフォーカルプランシャッター対応機種)」とは違い、価格的にも少々下落しています。と言うことは今が狙い目かも知れません。もちろんボディの確保が先決で、既にボディをお持ちの方は更なるシステムアップが可能となりますが、これも信頼あるお店でのご購入が最低の条件になってきますので念の為。






クラブクリック トップページ

クリックトレード

Photo: Eriko Sato